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沈黙が重くなってきたところで、ユールベルの頼んだレモンティが運ばれてきた。スライスされたレモンを紅茶に沈めてそっと口をつける。その温かさにほっとして、少しだけ気持ちが軽くなった。
「ね、ケーキも頼まない? 遠慮しなくていいのよ?」
ターニャは思いついたように勧めてくる。今日は彼女の奢りということなので、気を利かせてくれたのだろうが、どちらにしてもケーキまで頼むつもりはなかった。
「私、このあと用があるから」
「え? そうなの??」
「まだ一時間くらいは大丈夫だけど」
「そっか……」
ターニャは少し考えたあと、残っていたミルクティを飲み干した。ティーカップをソーサに置くと、ゆっくりと顔を上げて、まっすぐにユールベルを見つめる。
「私、ユールベルのこと、とても大切な友達だと思ってる」
一言、一言、噛みしめるように繋いでいくと、大きく息を吸い、思い詰めたように表情を険しくして続ける。
「だから、私から、言っておかなくちゃって……」
ただごとでなく緊張している彼女を見て、ユールベルは不安になってきた。あまりいい話でないことは容易に想像がつく。しかし、話の内容についてはまったく心当たりがなかった。僅かに眉を寄せながら、口を開こうとしている彼女の次の言葉を待つ。
「わ、私ね……今、レオナルドと付き合ってるの」
ガタン--!
ユールベルはテーブルに手をついて反射的に立ち上がった。顔をこわばらせて硬直する。思いもしないことに驚いたというのもあるが、それだけでないことは自分自身でよくわかっていた。
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