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「ごめんなさい、あの……」
ターニャは怯えたように身をすくめて目に涙を溜めていた。そんな彼女を見ていられなくて、ユールベルは下を向く。肩から髪がはらりと落ちて揺れた。
「どうして謝るの? あなたは何も悪くない」
そう、ターニャは何も悪くない。レオナルドも悪くない。悪いのは他の誰でもなく、勝手に動揺している自分自身。今の私にはそんな資格もないのに--。
「だけど……」
「もう行くわ」
「待って!」
ターニャの必死な声に追い縋られ、ユールベルは背を向けたまま足を止めた。緩いウェーブを描いた金色の髪がふわりと揺れ、後頭部の白い包帯がひらりと舞う。
「私たち、これからも友達よね?」
ターニャがおずおずと問いかけると、ユールベルはぎこちなく小さな口を開く。
「ええ、何も変わらないわ……」
「だったらお願い、行かないで!」
「……今は、一人になりたいの」
両手を顔で覆って静かに泣き崩れるターニャと、まだほのかに湯気の立ち上るレモンティを残し、ユールベルは足早に喫茶店を後にした。
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