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約束の時間よりだいぶ早く、次の待ち合わせ場所に着いた。近くの植え込みの煉瓦に座り、膝を抱えてそこに顔を埋める。前を通る人たちがちらちらと不思議そうに視線をよこすが、ユールベルにはそれを気にする余裕などなかった。通り過ぎる人たちの足音を聞きながら、膝を抱える手にぎゅっと力を込める。
どれくらいの時間が過ぎたのかもわからず、時が止まったように感じていた、そのとき。
「ユールベル?」
少し離れたところからジョシュの声が聞こえた。彼は急いで駆けつけてくると、隣にひざまずき、ユールベルの背中に手を置いて覗き込む。
「どうしたんだ? 気分が悪いのか?」
優しくあたたかな声、あたたかな手。そのせいで、必死に凍らせようとしていた自分の気持ちが一気に氷解した。バッと勢いよく彼の首に腕を絡めて抱きつく。ジョシュはバランスを崩して尻もちをつきながらも、ユールベルの体をなんとか受け止めた。
「ど、どうしたんだよ……」
ジョシュの声はうわずっていた。しかし、構うことなく、細い腕にぎゅっと力を込めて縋りつく。ピタリと寄せた体から体温と鼓動が伝わる。少し乱れた長い髪が、彼の背中側に落ちて揺れた。
「抱いて」
「……え?」
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