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「ここならどう? あまり人が来ないけど」
ほとんど会話らしい会話もせず、30分ほど歩くと、アンソニーは唐突にそう口を切った。
ジョシュは顔を上げる。
眼前は大きく開けていた。正面の煤けたガードパイプの下方には、大きな川が流れている。少し冷たい風が新鮮に感じられて心地いい。そして、まわりには、確かにあまり人がいなかった。
「あ……ああ……」
「良かった。おにいさんとここ来たかったんだよね」
アンソニーはそう言って屈託なく笑うと、河原へと続く石段を下りていく。彼が何を考えているのか今ひとつ理解できず、眉根を寄せながらも、ジョシュはその背中を追ってゆっくりと階段を下り始めた。
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