31人が本棚に入れています
本棚に追加
「おまえたちのことを聞いた」
石段を下りきったところで、ジョシュは河原の小石を踏み鳴らしつつ切り出した。
アンソニーは不思議そうな顔で振り向く。
「どういうこと?」
「それは、その……ユールベルとおまえの関係というか……えっと……」
覚悟は決めてきたつもりだったが、いざとなると口に出すのが憚られ、みっともないくらい狼狽えた曖昧な言い方になってしまう。しかし、アンソニーは、その様子で何を言いたいのか理解したようだ。一瞬、息を呑んで目を見開いたが、すぐに溜息をつきながら両手を腰に当て、いかにも残念そうに大きく抑揚をつけて言う。
「なんだぁ、先生、喋っちゃったんだ」
今度はジョシュが目を見開いた。
「え……? 先生って、サイラスか?」
「先生から聞いたんじゃないの?」
「俺は、ユールベルから聞いた……」
「へえ、姉さんが……」
アンソニーは斜め下に視線を落としながら考え込んだ。まさかユールベル本人が言うとは思わなかったのだろう。考え込みたくなるのも無理はない。だが、それをいうならジョシュも同じである。
「サイラスは知ってたのか?」
「まあね、僕が言ったから」
半信半疑で尋ねると、アンソニーは事も無げにさらりと答える。なぜ、サイラスにだけ話したのか疑問に思ったが、彼はサイラスを慕っており、ユールベルと付き合ってほしいと願っていたようなので、あえて本当のことを話しておいたのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!