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「今日もおにいさんとデート?」
ベランダから顔を覗かせたアンソニーが、さらさらと短い金髪をそよがせながら、小さな如雨露を片手にそう尋ねた。如雨露の先からは水滴がしたたっている。ちょうどプランターに水をやっていたところのようだ。
そのプランターは、ジョシュが作ってくれたものである。
話し合って決めたわけではないが、平日はユールベル、休日はアンソニーが世話をするようになっていた。何をすればいいのかわからなかったが、ジョシュに言われたように適当に水をやっていたら、本当に若緑色の小さな芽が出てきた。今は、まだ花は咲かせていないものの、青々とした背丈がしっかりと着実に伸びてきている。
「ゆっくりしてきなよ。遅くなってもいいからね」
彼は軽く笑いながらそんなことを言う。
ユールベルはムッとして眉をひそめる。そして、口をつぐんだまま、緩いウェーブの金髪をなびかせて足早に部屋をあとにした。
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