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「俺は、逃げない」
「今はそう思っていても、いつか……」
「どうやったら信じてもらえるんだよ!」
「ジョシュは悪くない。悪いのは私……だから、どうしようもない……ごめんなさい……」
ユールベルは泣きそうになるのを懸命に堪えようとしていた。唇を強く噛みしめて目を伏せる。けれど、怖いくらいまっすぐな彼の眼差しに、全身が熱を帯び、胸が焼けるように熱くなり--そして、右目から大きなひとしずくが零れ落ちた。
さらに強く唇を噛み、こぶしを握りしめる。
それでも、次々と溢れくる涙は止められない。やがて、堰を切ったように大声で泣き崩れた。その場でうずくまって激しく慟哭する。そこが往来の真ん中であることも、研究所の近くであることも、誰かが見ているかもしれないことも、知り合いが通るかもしれないことも、何もかもどうでもよかった。
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