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「アンソニー?」
ようやく家に帰ったユールベルは、真っ暗なリビングルームで弟の名を呼んだ。
しかし返事はない。
寝室やキッチンなど他のどこからも明かりが漏れておらず、浴室にもいる気配もない。もう寝てしまったのだろうか。何となく嫌な予感がしながらも、手探りで照明のスイッチを入れると、テーブルに紙が一枚置いてあるのが見えた。ユールベルは近づいて目を落とす--瞬間、それを掴み取って凝視し、大きく息を呑んだ。
紙にはアンソニーの筆跡で、ひとことだけ書かれていた。
さようなら、と--。
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