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自業自得--。
ユールベルは心の中で溜息をついた。
行きたくはなかったが上手く断ることができず、またジョシュに対する意地もあり、仕事が終わったあと、レイモンドに誘われるまま食事に出かけることになった。
彼が予約していたのは、研究所からほど近いところにある、優雅な雰囲気のレストランだった。出される料理も手が込んでいて上品なものばかりだったが、ユールベルはほとんど上の空で、きちんと味わうことができなかった。こういう店は初めてということもあり、どうにも馴染むことができず、居心地の悪さを感じていたのだ。
しかし、理由はそれだけではない。
レイモンドは相談にのると言って食事に誘ってきた。だが、いざ来てみると、そういう話題はまったくなく、ひたすら自分の話ばかりしていた。その内容は、自己顕示欲を満たすためだけのもの--平たく言えば自慢話である。ときどきユールベルに話を振ってきたが、それも仕事とはまったく関係のない、ラグランジェ家に関する話題のみである。別に相談したかったわけではないが、彼の意図がわからないことに少し気味悪さを感じていた。
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