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「あの、ちょっと部室に忘れ物取ってくるね」  何も知らない香奈美が私に向かって笑っているのを見ているのが辛くて…返事を聞くこともなく私は駆け出す。  ―――まるで逃げるように。  走って……  走って……  息が切れるまで走って、やっと私は足を止めた。  息を整え、視線を前に移した瞬間、私は目を見開き固まってしまった。  だって目の前には青葉が立っていて私を見ている。 「木下……」  青葉がすごく優しい顔で私を見つめ、私の名前を呼ぶ。  そんな風に私を見ないで……  胸がキュッて締めつけられ、辛くなってまた逃げ出したくなる。  でも青葉に言いたいことがあったから私は逃げずに珍しくまっすぐ青葉を見つめる。 「ありがとう」 .
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