10人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はやっと要から解放され、足早に彼女のいる教室へと向かう。
教室に着き中の様子を伺うと、いつもと変わらず香奈美と一緒に居る彼女の姿を確認できた。
「うっす!」
俺は嬉しさを少し隠しつつ軽く声をかけ、二人のもとへいく。
香奈美は俺に気づき、笑顔で迎え入れてくれたが、彼女の様子が少しおかしい気がした。
確かにいつも香奈美がいるせいかそんなに笑ってはくれないが、愛想笑い程度はしてくれていた。
なのに今日の彼女ときたら俺から目を反らし、伏し目がちで―――今朝は平気そうだったけど、もしかしたら具合が悪い?
一旦、そう思い出すと彼女の顔色が少し悪い気もし、段々、心配になってきた。
「杏奈、どうかしたの?」
声をかけようとした瞬間、俺の目線に気づいたのか香奈美が彼女の顔を覗き込み、様子を伺う。
「…何でもない」
全然、平気そうじゃないのに「何でもない」と言う彼女に俺の心配は更に膨らむ。
.
最初のコメントを投稿しよう!