9人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな時、頭に浮かぶのは彼女の顔。
俺はポケットから携帯を取り出すと迷わずボタンを押す。
すぐにコール音が鳴りだす。
早く出てと願うが、いくら鳴らしても彼女が電話に出る気配はない。
焦りと苛立ちが募り、鳴らしていた携帯を消す。
ただ彼女に会いたくて……
会いたくて……
会いたくて……
携帯を握りしめ、俺は気づいたら走っていた。
携帯に出ないなら会いに行けばいい。
この胸いっぱいの悲しみや辛さを彼女の顔を見て少しでも和らげたかった。
一人で抱え込むには大きすぎる痛手。
俺にとって『香奈美』とはそれだけの存在だった。
.
最初のコメントを投稿しよう!