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慌て過ぎ、手がもたつくがどうにかボタンを押し、聞こえてきたコール音に焦りを募らせる。
早く声が聞きたい……
早く顔が見たい……
気持ちばかりが募り、またそれが苛立ちに変わっていく。
『……はい』
5コールくらい鳴ってやっと聞きたかった彼女の声を聞くことができた。
でもどうも様子がおかしい---ディスプレイには俺の名前が出ているはずなのに彼女の声は消えそうなくらい小さく、そして酷く沈んでいるようだった。
「会いたい!!今、家の前にいるんだ……」
彼女の様子が気にはなったが、それよりも『会いたい』という気持ちのほうが大きかった。
ガタガタという慌しい音がしたかと思うと家の方からも物音がリアルに聞こえてきた。
その物音のするように目を向けると携帯を耳にあて俺を見る彼女と目が合った。
瞬間、さっきまでの重い気持ちが軽くなるのを感じ、そしてずっと強張り続けていた顔がほころんでいくのが自分でも分かった。
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