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でもすぐにまた気持ちが落ちていく……
俺を見つめる彼女の目には嬉しさも喜びもまったく感じられなかったから。
それどころかどこか悲しげに俺を見つめ、そのうち静かに目線を落としてしまう。
見えるところに居るのに……
声をかければ届くところに居るのに……
彼女はその窓さえ開けてくれずにただ沈んだ顔で俯くだけ。
「……少しでいいから出てきてくれないか?」
勇気を振り絞って言ったが、彼女は耳に携帯を当てたまま立ち尽くしているだけで何の反応も示してはくれなかった。
焦りがやがて不安に変り、俺は段々、ジッとしていられなくなっていく。
そして我慢の限界に達し、今まで踏み入れたことのない彼女の玄関前の階段に足を踏み入れた。
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