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頬を伝う温かい感覚に驚きながら彼女に見えないように制服の袖で拭う。
でも涙は止まることなく頬を伝い落ちてゆく。
俺は彼女を抱きしめたまま何度も何度も拭い続ける。
「ごめんね…」
俺の腕の中で彼女が小さく謝りだす。
その声は微かに震え、彼女自身も体を微かに震えているのを感じた。
すぐに彼女も泣いているんだと気づき、胸が痛んだ。
*
体調が悪いと家に帰ったけど、私はずっと落ち着かなかった。
青葉にとって香奈美は"大切な人"だと知っていたから。
香奈美が今日、青葉に告白すると知ったとき、一瞬、自分が怖かった。
青葉には私がいる―――そんな酷いことを思ってしまった。
優越感に近い感情が私の中で初めて生まれ、自分が酷く醜く感じてしまった。
香奈美が笑えば笑うほど自分の中のドロドロとしたものが大きくなっていくようで嫌だった。
何度も何度も心の中で香奈美に謝ったけど、消えない罪悪感。
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