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私は学校から逃げ出すように出ると迷わず香奈美の家の方向に足を進めた。
前に一度だけ行ったことのある香奈美の家に。
元々、方向音痴な私だけど香奈美の家だけは一発で覚えた。
---だって香奈美の家の隣には青葉の家があるから。
単純な私。
でもあの時、初めて青葉の家を知り、それだけですごく嬉しかった。
あの丘でしか会ったことのない青葉の家を初めて知る喜び。
あまりにも知らないことだらけの私たちだったから。
でも同時に香奈美と青葉との距離の近さ、歴史の深さを思い知らされた。
香奈美の家に近づくにつれ、あの時の締めつけるような胸の痛みを感じ始める。
でも今、青葉は学校にいて香奈美の家に行っても居ないってことだけが救いだった。
青葉を少しでも意識しなくてすむから。
変な時間帯に学校とは逆に歩く私をすれ違う人が不審そうに見てくるのが分かる。
でもそれを気にしないように、でもやや俯き加減で私は歩き続けた。
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