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「あ、青葉だ……」
ポツリと溢すように香奈美が小さく口にした名前に私の心は一気にざわつきだす。
あの日以来、どんなに探しても青葉を見かけたことも近くに感じたこともなかった。
ダメだ、ダメだと思いながらついその姿を……
ちょっとした気配を探してしまう私。
そんな時は全くかすりもしないくせにこんな風に無防備に構えていた時に限って青葉が側に居るなんて……
見たいのに見れないその姿。
私は香奈美には気づかれないように微かに俯き青葉を見ないように堪える。
でも視界の角に捉える香奈美の体の方向で青葉がどの方向にいるのか分かってしまった。
ヤバイ……正面だ。
益々、顔を上げることができなくなった私は気持ちを堪えるようにぎゅっと制服のスカートを握り締める。
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