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「のよ……」
聞き逃しそうなくらい小さな声でポツリと溢す香奈美に俺は「え?」と聞き返すと
「だからそれで私にどうしろって言うのよ!」
俯いていた香奈美が目に涙をいっぱい溜めながら俺を睨み、言葉を吐き捨てる。
まさか香奈美がこんな風に怒るなんて思ってもいなくて俺は驚きのあまり言葉を失う。
「やっぱり私が悪いみたいじゃない。それに青葉は杏奈のことばっかり。私の気持ちなんて全然分かってくれない!じゃあ、私が何も言わず青葉への気持ちを捨てれば良いの?私の気持ちなんてそんなちっぽけなものだって思ってたの?」
香奈美は怒りを露にして捲くし立てるように話し出しジリジリと俺に迫りよってくる。
それはあまりの迫力に俺は圧されながら思わず後退りしてしまうくらいのものだった。
でもそんな香奈美からは痛いくらいの悲しみがひしひしと伝わってくる。
俺は彼女の誤解を解きたかっただけなのにそれがまた香奈美を傷つけてしまうことになったのだとやっと気づいた。
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