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ーー日がすっかり沈んだ頃、俺たちは【釣り同好会】の拠点へと到着した。拠点といっても城や要塞といった大それたものではなく、簡素な木造の一戸建てだ。
中は二階建てで、一階はリビングやキッチン等があり、二階は俺たち三人の部屋がそれぞれある。
家具も内装も殆どが木造で、いわゆるログハウスのような造りになっている。
「いやはや、こんなに待たされるとは思ってませんでしたよ」
一階のほぼ中央に配置された丸太でできた机。その縁にそって置かれている切り株のような四つの椅子。その一つに腰掛ける、タキシードを着た黒髪の男がはっはっと笑った。が、しかし銀縁眼鏡の奥に見える目が全然笑っていない。
「いや、ほんとすみません」
俺は既に空になっているカップを片付け、新しい二つのカップにコーヒーを注ぎながら謝る。
「ちょっと遠くへ散歩しに行ってたもんで……」
我ながら苦しい言い訳だ。
「そうでしたか、お忙しい時に申し訳ない」
「いや、全然」
カップに注ぎ終えたコーヒーの一つを男へと渡し、俺は男の向かい側の椅子へと座る。
ちなみに俺以外の二人はというとミケは気まずそうに俺が今いる部屋の角に座り、スピは自室へと籠っている。
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