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「こんな世界の端っこで燻っていては勿体無い。悪い話ではないでしょう。どうです? 一緒にゲームクリアを目指しませんか?」
コーヒーカップを机にコトンと置いたネロが俺の返事を促す。その顔には微笑みを浮かべているが、やはり目は全く笑っていない。
気付けばいつの間にか一階へと降りて来ていたスピと、部屋の角にいるミケが静かに成り行きを見守っている。
俺はネロの真意を読み取れずにいた。はたから見れば、俺たちは辺境の地で領土がたった一マスの小国。そこに、ある程度大きい領国の領主が直々に勧誘に来ているのだ。何か裏がある気がしてならない。そして、内に秘める目的も分からない。が、真意がどうあれ、俺の答えは最初から決まっている。
「この間も言ったと思いますが、俺たちはそういった事に関わるつもりはありません。お断りします」
ネロは眉間へとシワを寄せ、俺をジッと見る。やがて「ふう」と息を吐くと、席を立ち上がり、膝の上に置いていたシルクハットを被る。
「そうですか、残念ですね」
そう言うと外へ繋がる扉へと歩き出した。が、「あ、そうそう」と突然立ち止まる。
「次にお会いする時にはお気をつけますよう」
振り向いたその表情は今までとは一変、不気味な笑みを浮かべていた。
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