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「うわっ!」
俺は我に返って慌てて立ち上がり、釣竿に手を伸ばすと、それを握る。そして勢いよく振り上げた。
ザッパーン!と糸に吊られ水飛沫と共に魚が釣り上がる。と思ったがその先端には針があるだけ。餌が無い様子から獲物には逃げられた事が分かる。
「ああ、駄目か……」
溜息と共に再び地面へと腰を降ろす。そして首を傾げた。釣竿を振り上げた時、確かに大物が釣れたかのような水飛沫の音がしたのだが、何故か針には何も引っかかってはいない。
ピチピチッ。不意に魚が跳ねる様な音がし、無意識に横を向く。
その目線の先ではスピが一メートルほどもある大きさの生魚を半分押し潰されながら抱いていた。
まるで魚をあやすようにヨシヨシと撫でながら口に刺さったままの針を抜く。そして、パクパクと口を開閉するエラ呼吸の生物を地面に寝かしつけると、再び川へと釣竿を振った。
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