「嬉々迫る不幸自慢」

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「僕には友人はいない。外でも差別を受けた。味方はいない。いつだって」 気付いた時にはひとりぼっちだった。 「キミは、どうだ。その国民とやらに、蔑まれる以外に、実害はあったのか。味方はいなかったのか」 サキュバスは、 「……み、味方は、いた……。両親と、信用出来る、家臣が……」 「家臣、ね。なんと恵まれていることか」 臣がいるだけで。どれだけ恵まれていると思っているんだ。みんなが一国の王や女王の子じゃないんだぞ。 立場が変われば悩みが変わると言うが、だからって、高みにいるやつは幸福に決まっている。贅沢な悩みだ。悩みを選べるほどに贅沢だ。僕に選ぶ権利なんか、ありはしなかった。 「それどころか、キミは、行動を起こして非難されたんだろう」 僕はサキュバスの瞳を覗き込んで言う。サキュバスの目は、何に対してかは分からないが、潤んでいる。 「回避しようとすれば出来る非難じゃないか。僕とは違う。僕はいるだけでダメなんだ。いることが不正解なんだ。いることが迷惑なんだ。そう言われてきたんだ」 だからって、消えてやるほど素直じゃないが。 「だから、キミは幸福で。僕のほうが、不幸だ。異論はあるか?」 「…………」 サキュバスは答えない。どうにも、放心しているように見える。そんなに自分の恵まれた不幸が自慢だったのだろうか。
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