「嬉々迫る不幸自慢」

18/33
前へ
/33ページ
次へ
「……キミは差別を、虐げるものばかりだと思っているようだが、優遇することだって差別だ。言い方を変えれば贔屓になる。していることは真逆だとしても、本質は差別だ。差をつけ分けて考えているのだから」 サキュバスさんは興味深そうに、うんうんと頷きながら聞いている。その真摯な瞳がなんだか気恥ずかしい。 「……だから、もし、キミが勝ち残り、差別を無くしてしまったら、この世界は一辺倒で味気ない、個人の意味が無くなってしまった世界になるだろう。だから、願うならせめて違うものにしたほうが良い。と、僕は思う……」 最後の方は尻すぼみになってしまった。自分の言うことに自信を持つことは簡単ではない。 説得力のない僕の言い分を聞いたサキュバスさんはというと、 「……なるほどのう、確かに、一理ある」 妙に神妙な顔で頷いている。そんなに真に受けなくてもいいものを。 「そうじゃのう、貴様の言うとおりじゃ。差別撤廃はやめにしよう。代わりに、そうじゃのう……。我が国民に、我が僧侶であることを心から認めさせるとかかのう。これなら大丈夫か!?」 「え、あ、た、たぶん大丈夫かと……」 「そうか、なら我の願いはこれに変更じゃ」 別に何でもいいけれど。というか何で一回僕に伺いを立てたんだ。責任は持てないぞ。 サキュバスさんはどこか清々しそうに伸びをして、 「んー……、ククク、さて、それではのう、我らの連合名についてだが」 「そんなことは一度も話題に出ていない」 「!?」 「何を驚いている。一番驚いたのは僕だ」 「冷静そのものではないか……」 「僕は見た目に出ないだけだ」 良く言えばポーカーフェイス。悪く言えば仏頂面。突き詰めれば何を考えてるか分からないやつ。今まで何一つプラスに働いたことなどないけれど。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

321人が本棚に入れています
本棚に追加