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深夜二時。草木も眠る丑三つ時。外は夜闇に包まれ、僅かに風の音が聞こえるだけだ。
その風に乗って、視認すら難しい、黒い影が漂っている。ふわふわと、あるところに向かってその影は流れていく。
その影は、窓から舌崎凡人の部屋に入り込む。影は様子を窺うように、部屋の真ん中で漂う。
そして、影はシュルシュルと床に降り立ち、人の形を成す。するとそれは、
「……クックック、よう寝ておるわ」
サキュバス・アリーヤ・クロエに変貌を遂げた。
我はニシシシ、と悪い顔で笑い、
「クックック、我のサキュバスの力を使えば進入などお茶の子さいさいじゃ。さぁてのう、今日の非礼と、逃げたことについて弁解してもらい、そして我が連合に入ってもらうかのう。しかし、その前に……」
我は布団の中で丸まり、頭さえ出さず眠っているナミヒトを見る。サキュバスは夜目が効くので、布団のしわまではっきりと見える。
「クククク、何かイタズラしてやろうかのう。どれ、まずは額に肉と……、って、ん? なんじゃ、この匂いは」
スンスンと匂いを嗅ぎながら部屋を見渡す。すると、匂いの元凶はすぐに見つかった。
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