「嬉々迫る不幸自慢」

2/33

321人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
深夜二時。草木も眠る丑三つ時。外は夜闇に包まれ、僅かに風の音が聞こえるだけだ。 その風に乗って、視認すら難しい、黒い影が漂っている。ふわふわと、あるところに向かってその影は流れていく。 その影は、窓から舌崎凡人の部屋に入り込む。影は様子を窺うように、部屋の真ん中で漂う。 そして、影はシュルシュルと床に降り立ち、人の形を成す。するとそれは、 「……クックック、よう寝ておるわ」 サキュバス・アリーヤ・クロエに変貌を遂げた。 我はニシシシ、と悪い顔で笑い、 「クックック、我のサキュバスの力を使えば進入などお茶の子さいさいじゃ。さぁてのう、今日の非礼と、逃げたことについて弁解してもらい、そして我が連合に入ってもらうかのう。しかし、その前に……」 我は布団の中で丸まり、頭さえ出さず眠っているナミヒトを見る。サキュバスは夜目が効くので、布団のしわまではっきりと見える。 「クククク、何かイタズラしてやろうかのう。どれ、まずは額に肉と……、って、ん? なんじゃ、この匂いは」 スンスンと匂いを嗅ぎながら部屋を見渡す。すると、匂いの元凶はすぐに見つかった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

321人が本棚に入れています
本棚に追加