「嬉々迫る不幸自慢」

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―――――― ――― 朝である。 「………………」 結局眠れなかった。もしや、新生活で緊張しているのかもしれない。ありうる。存分にあるうる。 しかし、眠れなかったことは仕方ない。寝不足には慣れていないわけじゃない。眠れない夜なんていくらでもあっただろう。まずは朝食だ。授業が始まる前にしなくちゃいけない準備はごまんとある。 僕はベッドから起き上がり、制服に着替える。周りは皆私服なのだが、僕は洒落た服もシンボルになるような衣装も持っていない。制服で十分だ。選ぶのに悩んだりする必要もないし。 さて、朝食はどうしよう。適当に購買で惣菜パンでも買って、部屋で食べようか。 「…………」 しかし、それはどうにも気が乗らない。何となく気が乗らない。どうしよう。 僕は悩みながらも、ボサボサになっている髪の寝癖を取り、顔を洗い、歯を磨く。朝起きたら歯を磨く。寝起きの口内は良い状態とは思えないから。 「……食堂に行こう」 ああ、そうだ。食堂に行こう。そこでなら何か食べられるだろう。 しかし、食堂か……。人が多そうだ。億劫だな。しかし、今はそんな気分だ。これはいいことなんじゃないか? こんなに積極的な気持ちは久々だ。いつだったか思い出せないくらい久々だ。 「……行くか」 僕は一つあくびをして、部屋を後にした。今なら出来る、僕ならやれる。食堂で朝食を食べるくらい人間だったら出来るに決まっている。 ――― ――――――
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