「嬉々迫る不幸自慢」

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サキュバスの顔がしかめられる。だが、それがなんだ。僕は既に顔から表情が消えている。 「キミは何故僕が、キミの手を振り払ったのか知りたいんだろう。教えてやろうじゃないか。それはキミのような人間が嫌いだからだ」 「……ほう、急に態度がでかくなったのう。なんじゃ、そんなに図星を突かれたのが痛かったのか?」 サキュバスは挑発する。遅い。もう僕はキミを攻撃している。 「キミの目は節穴か。いや、満ち満ちていて、他人の不幸も見えなくなっているのか。便利な目だ。是非取り替えて欲しいね」 僕の口は止まらない。言葉が頭から舌へ、舌から空気へ。それは音になって僕の口から発せられる。 「まず、キミはあの時言っただろう。『もう一度我を助けてくれるじゃろう?』と。頼めば助けてくれると思っている時点で、キミは甘い。世間を舐めている。世界を軽視している。そんなに都合が良くいくものか。だがキミは頼んだ。前例があるからだ。頼めば助けてくれる誰かがいたからだ」 それがどれだけ、恵まれていることか。 僕が矢継ぎ早に責め立てるのに、サキュバスはたじろぎ、 「わ、我のことなど、何も知らぬくせに、知ったようなことを言うな! 貴様に我の何が」 「キミこそ。僕の何が分かる」 僕は睨む。意思を込めて。有無など言わせない。その高慢ちきな態度、僕の不幸で叩き潰す 僕の視線と発言に言葉が詰まっているサキュバスに、僕は提案する。 「不幸自慢をしようじゃないか」
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