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今日の授業は一通り終わり、僕達はまた食堂に行くのも何だしと思って部屋に戻った。
あ、そうだ。貰ったクッキーでも食べようかな。
「暁も食べる?クッキー」
「要らね」
即答。素っ気なく返答した暁はそのままお風呂の用意をして入って行った。
何だよ…食べればいいのに。
「ま、いいや。僕にくれたものだし。」
そしてクッキーを一口食べる。すると、ふと昔の記憶が蘇ってきた。
*******
〔ヒナタ、ほら。クッキー上手に出来たわ〕
〔うっ…ひっく…ほんとぉ?…母様〕
〔ええ、食べてみて〕
〔はむ……美味しい!〕
〔ね?やっぱりヒナタのクッキーは最高だわ…〕
〔母様!〕
******
顔も名前もどんな人だったのかも知らない母様との記憶。これが本当の記憶かも分からない。でも、優しく笑う口元が本物だというのは確かで…。
「どうしてだろうね……」
こういう時、兄様に会いたくなる。実の兄弟ではないけれど。生まれた時から片時も離れなかった兄様。
今は玖華白家次期当主である兄様。いずれヴァンパイアの王様になる人。
どうして僕には純血の、兄様と同じ血が流れてるんだろう…。
もしかしたら、それすら違うのかもしれない…。
そう思い立った僕は、自給自足という馬鹿な真似をした。要するに、自分で自分の血を飲むという行為にー。
自分の手首に牙を立てて意を決して皮膚を貫いた。その時、
バタンッ!!ドタドタドタ!!
物凄い音で扉が開く音と、物凄い勢いで走って来る足音が聞こえてきた。
「ヒナタ!!」
「暁…?どうし…」
「お前何やってんだよ!」
……え?お風呂から上がった所だったのか、暁は上半身裸で、まだ濡れてる状態で僕の居るリビングにやって来た。その表情は驚愕と心配のような感じだった。
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