1.ハカセの説明会

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会場には20名程のスーツ姿の男女がいた。平均年齢は高めで、相応の役職の人達らしい。 関係者以外は立入禁止だ。 ASILの人間は、4人が会場の世話をしていた。 室長のアネサンこと瀬織と、副室長のモヤシこと板垣 久47歳、メガネこと角丸 里理29歳、刃平の許婚1号のドジコこと東雲 あかり19歳だ。 ハカセはすでに、スクリーン前で、発表の最終準備をしていた。 刃平とジイサンは、受付のドジコに、前から5列目の席を案内され、座る。 前には大型スクリーンと壇があり、横手に責任者と進行役である、瀬織とモヤシがテーブルに着いている。 時間になり、モヤシが会合の開始を告げ、瀬織が挨拶をする。 それを聞いて、刃平は (みんな、大人の仕事してるんだなあ。) と、当たり前のことを再認識した。 モヤシのアナウンスで、ハカセが壇上に上がる。 周りからひそひそ話が聞こえた。 (ほんとに子供だな、人形みたいにかわいらしいじゃないか) (この研究室は、美人ばかり揃えてるな) (ここは、特務部隊らしいから、めったなことは言うなよ) ジイサンは小声で 「質疑になったとき起こしてくれ。あれが毎回楽しみなんだ。」 と言うと、目をつぶった。 寝る気まんまんらしい。 ハカセがスクリーンの画像を指しながら話しを始めた。刃平も3分聞いたら眠くなった。 「…気の概念を量子の観点から捕らえるため、まず仮説を立てていきます。 ひとつめ、質量を伴う物質への関与が可能であることから、いわゆるヒッグス粒子の操作を行っていると考えられます。 仙道でいうところの、世界は気ですべてが出来ているという概念は、これに合致しているのも注目点です。… …仙になった、とされる状況を簡略に述べます。 自己の肉体を一度分解、肉体を再構成する設計図と、意識を仙界に上げておき、肉体を再度作り直します。 材料とエネルギー源は、世界を構成するいわゆる気を用います。 仙道思想では、先天の気、後天の気が区別されており、乱暴に言うなら、先天は生まれながらに持つ気、後天は食事などで取り込む気、と大別します。 先天は自己を司る設計図、後天は自己を形作る栄養や、稼動させるエネルギーと仮定してみます。 仙になる際、先天の気まで分解して無になるため、先天に含まれる子孫を作る気も、消失します。 逆に消失しないと、無にならないので、必ず無くなります。
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