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30分の説明が終了し、質疑応答の時間となった。
刃平はジイサンをつついて起こす。
「お?きたきた。」
ジイサンが大きな身体を揺すって座り直した。
一人の白髪の男性が手を挙げた。
「東阪大学で量子物理学の研究をしている諏訪といいます。話しの中で、クラウド、あるいは仙界、という概念がありましたが、それはどこに存在すると考えていますか?」
ハカセは
「私の考えを素直に言うと、あの世の手前ですね。」
会場がどよめいた。
失笑も聞こえた。
ハカセは意に介していない。真面目な顔で
「何かおかしいことを言ってますか?」
と問う。
「いや、あまりに突飛で…」
諏訪という男性も苦笑した。
「人が死に、その人の意識が空間に焼き付く現象を、幽霊であると解釈してます。その意味で意識が留まる領域が、あの世の手前と考えます。」
「幽霊は存在するとお考えで?」
「世のすべては気で出来ている、とすると、いても当たり前です。」
諏訪は諦めたように
「ありがとう。」
と言って座った。
ジイサンは、クックッと笑っている。
次に手を挙げたのは、髪を短く刈り込んだ、がっちりした40代の男だった。
「自衛隊 2等陸佐 岩月です。
今回、指示を受け、初めて参加させて頂いてます。
失礼ながら率直に言うと、信じることができない。
映像はいくらでも造れる。
上からは今後、そちらと協力するよう言われているが、信じられないものに協力はいたしかねる。
そこで、信じるにたるものを何か得て帰りたいが、いかがでしょう?」
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