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会場から、ああ、なんだ、知らないヤツはしょうがないな、といった空気が流れる。
ジイサンが
「毎回、このテの固いのがいるんだよ。
旧帝国陸軍のワシも、初めは半信半疑だった。」
と刃平にささやく。
ハカセは壇から下り、代わりに瀬織が上がる。
「防衛省 技術研究本部 対静侵略研究室 ASIL 室長の右道 瀬織です。
ここは私から説明を。
論より証拠、体感頂きましょう。
しかし、毎回私がデモンストレーションしても面白くないですから、新人を使ってみましょう。」
刃平はドキリとした。
(新人って、俺しかいないだろう。
聞いてねえよ!いつものことだけど。)
瀬織が手招きで
「岩月さん、こちらへ。
それと、
刃平!来てちょうだい。」
「おいおい…やっぱりだ。」
刃平は出ていきにくい。
ジイサンがニタニタしながら刃平の尻を叩く。
仕方なく刃平は壇に上がった。
会場がこれまたどよめく。
なにせ制服を着た中学生だ。
野次が飛んだ。
「がんばれ少年!」
何回かこの会合に参加している者は、明らかにこのデモンストレーションを楽しみにしていたらしい。
瀬織が
「今般、私の跡継ぎとした、この右道 刃平に、未熟で恐縮ながら務めさせますのでご了承ください。」
と話し、岩月に、刃渡り25センチ程のコンバットナイフを渡す。
刃平に
「霊服出して。ナイフで刺してもらうから。」
と言い、岩月に
「こちらが準備出来次第、お好きにどうぞ。」
と説明した。
魂仙手は、一言で言うなら、気で霊服と呼ばれる強化服を作り、全身にまとい、空手ベースの体術で戦闘する技術である。
しかし、霊服自身が常識外れのの防御力と、攻撃力を獲得してしまう技術になっているので、実際に体術が出る幕は少ない。、
刃平は気は進まなかったが、例により手を挙げ、
「スタートアップ!」
と叫び、霊服を張った。
霊服は、その人の潜在意識により、形状が決まる。刃平は、自分が好きなテレビアニメのロボット「ヤルンダーJ」の形状になる。
霊服を出すためのきっかけとして、彼は、テレビアニメのようにセリフを言わないと、霊服を展開できない。
単に気分の問題なので、必須ではない。彼が未熟なためである。
しかし、会場で霊服が見えているのは瀬織だけだ。
霊服は、気で作られるため、通常は目視できない。
瀬織は岩月に
「準備完了。切るなり刺すなり。」
と促す。
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