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ドンッ
考え事をしていた挙句、上を見ながら歩いていたのがいけなかった。
「っ、痛ぇ」
「ご、ごめんなさい」
相手の顔も見ずに取り敢えず謝る。
それから顔を上げると、自分よりも一回りもふた回りも背の高い、いかついお兄さん達(不良?)が俺を見下ろしていた。
最初は俺を睨んでいた不良だったが、ふと視線が柔らかくなった。
「お姉ちゃん可愛いね。お茶でもどう?」
「えっ…いやっ」
男なんですけど!
そう言おうとして、自分が今女装をしていることに気づく。
それが良かったのか悪かったのか。
殴られなかっのはよかったものの、なにが好きで不良となんかお茶飲まなきゃいけないんだと心の中で悪態をつく。
それが顔に出ていたのか不良は俺の返答に態度を一変させた。
「ぶつかってきたのはそっちだろ!お茶で済ましてやろうって言ってんだ!黙ってついてこい!」
不良は俺の手を取って引っ張り出す。
後ろにはあと2人同じような不良がついてきた。
恐らく仲間だ。
「やだっ…やめろよっ」
「威勢のいい子だな。俺のタイプ」
「俺はしおらしい子がいいっス!」
お前らなんかのタイプなんて聞いてない!なんて死んでも口に出せない。
そんなことを口走ったら何をされるかわからないし、何より今俺は女装してるんだ。
知り合いの一人はいそうな大きい通り。
こんなところで女装してるのがばれたら一生外を歩けない。
逃げられればいいけど、俺は足が遅いのを自負しているし、何より腕を掴む力が強くてふり払うことすらできない。
不良はこのまま離す気はないらしいし、このまま連れて行かれるしかないのか、そう思った時だった。
ガッという鈍い音と共に不良が3人、地面に転がっていた。
それは紛れもない俺を取り囲んでいた不良。
そして俺も地面に膝をついていた。
きっと腕を掴まれていたせいで一緒に転んだんだ。
だがなんで不良は倒れて俺も転んでいるのか。
なにが起こったか分からない俺は、立つことも忘れて女の子がよくするようなアヒル座りでぺちゃんと座り込んでいた。
そんな俺を見て、腰が抜けて立てないと思ったのか後ろから足音が近付いてくる。
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