第一話:不良少年と不思議な少女

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「自転車……自転車がある!」 少女の目線には、俺が押してきたママチャリがあった。 「ああ、あれは俺の自転車だぞ」 そう言った瞬間、少女の表情が輝いた。 「あなたの!? お願いします! 明日返しますから、貸してください!」 いや、自転車って……。 確かに歩くよりは早いだろうが……こんなんで逃げられるのか? 「俺は別に歩いたって帰れなくもないから構わんが……」 「ありがとうございます!」 少女が俺の身体から離れて頭を下げる。 「すみません、お名前……いいですか?」 「紅葉高校二年三組、泉岳寺シノブだ」 「私は紅葉高校二年一組、梅屋敷アスミです。自転車、必ず返しますからね!」 そう言って少女――アスミは勢いよく看板の陰から飛び出し、俺のママチャリに飛び乗る。 すると、不意に俺のママチャリが光り輝き、あれよあれよと言う間に凄まじいスピードで走り去っていったのだ。 って、なんじゃこりゃ! 「しまった……! お待ちなさい!」 気付いたお嬢様が、慌てて追いかける。 しかしアスミの姿は既に見えない。 何がなんだかわからぬまま、俺は残された光の粒子が消えゆく様を呆然と見つめていた。
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