第三話:蜘蛛女と老執事

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*** 「一撃で終わらせてやるぜ!」 俺は目の前に立ちはだかる糀谷とかいう執事に向かって駆ける。 こんなジジイにかかずらっている暇はない。 早くアスミを助けなくちゃならねえんだ! 「全く、その目はワシを見ておらぬな……」 ジジイが不敵に笑う。 「仕方あるまい。立場を分からせてやろう!」 ――消えた!? 不意に、目の前から糀谷の姿が消える。 どういうことだ、こちらの身体能力は体操服で上がっているはずなのに! 「教えてやろう、小僧」 聞こえた声は、右から! 「ワシは体操服でパワーアップした貴様より、遥かに強いぞ」 糀谷の拳が、俺の脇腹に突き刺さる。 「ぐああっ!」 俺は思わず倒れ込んでしまう。いてえ! いてえええ! 「力任せの攻撃しかできぬ貴様には、何をされたか分からぬだろう。衝撃を内部に伝える術もあるということだ」 そう言って糀谷がこちらを睨み付ける。慢心は一切ない。 「身体に流れる気を練り、敵に叩き込む。何十年と生きてきて、ようやく辿り着いた極意だ。貴様ごとき小僧に、遅れをとるわけにはいかないのだ」 くそ……だが、ここで倒れたらアスミが……アスミが…… 「一つだけ、教えてやろう」 糀谷が、重苦しい声で俺に告げる。 「私は、お嬢様が生まれた頃からずっと側に仕えていた。貴様等のように、昨日今日で作られた絆とは重みが違う。実力でも想いの強さでも、貴様はワシに勝てぬのだよ!」 糀谷の言葉は、まるでハンマーのように俺を殴りつけてきた。
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