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――俺はこいつに勝てるのか?
ゆっくりと身体を起こしながらも、俺は精神にぽっかりと穴を穿たれたような感覚に襲われていた。
不良相手に無双していた俺の喧嘩が通用しない。
早くアスミを助けなくちゃならないのに。
くそっ、弱いな俺は。まさに井の中の蛙だよ。
だけど、まだ身体は動く。
動く限り、戦うしかないだろう!
「うおおおおお!」
俺は一気に距離を詰め、糀谷に向かって拳を振り下ろす。
「馬鹿の一つ覚えだな」
しかし糀谷は、俺の拳を難なく弾き、もう一方の手でボディブローをかましてきた。
「がはっ……!」
いてえええ!
腹の中で爆弾が爆発したような衝撃が巻き起こる。
「泉岳寺君! もういい! もういいよ!」
遠くから、アスミの声が聞こえる。
「ごめんね、泉岳寺君……。私ね、いけないのに、ダメなのに……あなたが来てくれた時うれしいって思っちゃった。一人で戦うの、ずっと怖くて……だから、嬉しいって、幸せだなって思っちゃった……。ごめんね、泉岳寺君の気持ちも考えずに、ごめんね」
バカだな、アスミ。
自分も恥ずかしい思いしてんのに、そんなこと謝ってんのかよ。
本当にバカだよ、お前。
まあ、バカはお互い様だけどな……。
「ほう、起きあがるか……」
糀谷の言葉で、俺は自分が立ち上がっていることに気付いた。
「よお、確かに俺とアスミは昨日出会ったばかりだ。絆という観点で言うなら、お前とお嬢様には到底かなわないだろう。だけどな……」
俺は拳を握り締める。
よし、力は入る。これなら、あいつを殴れる。
「女を辱めて笑ってるような連中に、俺は絶対に負けねえ! 辱められて、泣きながら、それでも俺を気遣う女を残して倒れるわけにはいかねえ!いかねえんだよ!」
俺の中に残っていた迷いや諦めといった感情を吹き飛ばすように、俺は叫ぶ。
糀谷は表情すら変えずに俺を見据えていた。
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