第一話:不良少年と不思議な少女

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*** 「ボールとってくださーい」 背後から聞こえた声に、俺は自転車を降りてゆっくりと振り返る。 足元にはサッカーボール。 声の主の物だろう。 俺はそれを拾い上げ、笑顔を作り、駆け寄ってくる小学生の集団を迎えた。 「ありがとうございま……ひぃっ!」 近づいてきた小学生が思い切り悲鳴を上げる。 そうだよな。ああ、そうだろうな。 「ほらよ」 俺は敢えてぶっきらぼうに、ボールを投げ返してやる。 小学生たちは礼も言わずに走り去っていった。 まあね、分かってたよ。分かってた。 俺がいくらスマイルを披露したところで、この生まれ持った容姿をごまかすことはできないんだって。 分かってたけど、けっこうキツイよな。 誰にも聞こえないように小さくため息をこぼし、向き直る。 自転車にまたがろうとして止め、押しながら人通りの少ない路地裏へと入る。 ボールを拾い上げた時に胸ポケットから飛び出した生徒手帳が、今さらになって地面に落ちる。 そこに記されている名前は、泉岳寺(せんがくじ)シノブ。 ――悪名高き、俺の名だ。
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