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何を言ってるんだこの女は……
俺の頭の中が疑問符で満たされる。
分からない。目の前の人間が分からない。
狂っているのかも正常なのかもわからない。
華奢なこの女が、得体のしれない怪物のようにすら思えた。
「私ね。欲望が見たいの。堕落が見たいの」
女は笑みを崩さぬまま呟く。
その強い視線はまっすぐに俺を貫いていた。
「単純に興味があるのよ。人を殺した人間が、どんな風に日々を生きるのか。どんな欲望を私に向けてくるのか……ね」
愉快そうに笑う女に、俺は大きく憤りを感じた。
この女は、俺を玩具にしようとしているのだ。
いや、むしろ観察対象だろうか。
自分を餌にして、それに食らいつく俺を観察して笑うのだ。
しかし、拒否権など俺にはない。
断れば、この女に全てをばらされてしまう。
ならば、仕方ない。
逆にこの女を、俺無しではいられない人間にしてしまえばいい。
俺に依存させてしまえば、この女も強気ではいられなくなるだろう。
そしていずれ、俺の写真へのパスワードを解明し、この女を殺す。
悪女を気取って男を舐めた報いを思い知らせてやる。
「私の名前は安永玲愛。よろしくね、鷹取公平さん」
当然のように俺の名前を呼びながら微笑む玲愛。
差し出される首輪と手錠。
俺は心を縛られ、玲愛は身体を縛られる。
――この日、あまりに奇妙な監禁生活が始まった。
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