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橋本用に用意されていた浴衣を
千夏に渡してそっと二人で
部屋を抜け出す。
ほとんど人の気配のない
階段を千夏共々降りて
貸し切り風呂のある別館へと向かった。
思ったより広い脱衣所で
シャツを脱ぎ始めた俺を
恥ずかしそうに見つめる千夏。
「…脱がねぇの?」
俺の言葉に顔を真っ赤にして
千夏は言った。
「わ…私は後から入るからっ」
…もう何度も躰を
見つめ合った仲なのに。
何で今更千夏は照れてるんだ?
なんて思いながら俺は服を脱いで
温泉へと足を進めた。
伊香保の街並みが見える
大きなガラス張りに
二人で入るには大きすぎるくらいの
檜風呂には掛け流しの温泉が
流れていて。
軽く体を洗ってからその温泉に
身を沈めて行く。
「うぁ~…」
思わず出てしまった声に
自分のおっさんぶりを痛感して
苦笑いした時、タオルを体に巻きつけて
千夏が恥ずかしそうに入って来た。
しばし戸惑った後、俺に背中を向けて
タオルを外した千夏は
軽くシャワーを浴びると
そのまま背中を向けて
檜風呂の端っこに身を沈ませる。
…全く…
可愛いすぎなんだよお前は。
そう思いながらその小さな背中を
優しく包み込んで。
「千夏…愛してる」
微かに揺れた肩に
そっと唇を触れさせた…。
もう…
お前を離しはしないから。
心でそう誓いながら…。
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