知らないキス

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地面を揺らすかのようにドシドシとフープから去っていく彼女。 「あれってチアーのシェリーだろ?」 その声に凌はぶたれた頬に手を当てながら振り返る。 「チアーかどうかは知らないけど前にシェリーって名前を教えて貰ったね」 「で、なんで殴られてんの?」 そんな質問に「さあ? なんでだろう」と本気で答えるからレオの困惑気味で。 「どうみてもシェリーはお前に気があるように見えたけど?」 「そうみたい」 それが分からないほど鈍感じゃない。だからハッキリと『彼女がいる』と伝えたし気が無いことも伝えたはずなのに。 「……もう一度聞くがなんで殴られたわけ?」 「うーん、シェリーの胸を誉めなかったからかな?」 本気で悩んで出した答えがこれだから、レオでなくてもうなだれてしまうのは仕方のないこと。 「馬鹿か? お前は! あんないい女が言い寄って来てんのに――」 「言わなかったっけ? 彼女いるんだよ」 「日本にだろうが! その彼女はエスパーか? お前が浮気したのを察知するのか!?」 「別に彼女はエスパーじゃないけど、彼女以外キスしたいとは思えない」 「……」 きっぱりはっきりとした答えにはレオも唖然としてしまって。 「どうかした? レオ」 唖然としながらも出てきた結論は、 「そんないい女なわけ?」 そう言うことで。だから凌はニコリと笑って、 「好きだよ」 とだけ答えた。
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