知らないキス

38/40
2212人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「え? じゃあ、あたしと同じとこ!?」 そんな真由美の声に「うん」と頷くと、 「やったぁ!」 「わぁ!!」 思いっきり抱きつかれて倒れそうになる。 「あそこはさ、体育科もあるから結構バスケの先輩とかも多いんだよ」 そしてそんな真由美の台詞に美穂は苦笑いしながら「知ってる」と答えた。 そこは琢磨と手塚も通ってる大学で、だから決めたって訳では無いのだけど――。 「あたしもそこ受けるから」 「え?」 聞こえてくる声に隣を見れば参考書を抱えたメイ。 「そう、なの?」 「うん。だってアキもそこだって言うんだもん」 「え? 藤井君が? やっ、でも藤井君ならもっと上の大学に――」 その大学の偏差値が低いわけではない。学部によってはかなり偏差値が高かったりする。 けど、アキの頭がいいのは誰もが知っている。 いつだって学年トップ、までは行かなくてもそれに近い順位で廊下に名前を張り出されているから。 「あそこの経済いいんだって。それに家から通えるし……」 総合大学だからメイも受験して受かるかもしれない学部があるかもしれない。そう思ったのに、 「トモ兄も通ってるから」 「はい?」 見当違いの答えに思わず声が上がる。 「だから、アキのお兄ちゃんもそこだからいいんだって」 「……」 多分、違う。そう思ったのだけど、 「じゃ、皆で合格できるように頑張ろっか?」 とりあえずそういうことにしておいた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!