知らないキス

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「ってか、引退しないんですか? 受験、諦めたとか?」 「はい? ――って、なんでそんなことっ」 彼女に言われないといけないのか。 だけどそう言い返そうとする美穂に彼女は気になけることなく、 「凌が心配してましたよ。英語が苦手なんですって?」 「――え?」 「英語なんて馬鹿でも出来る言語なのに」 クスクス笑う彼女。なんで英語が苦手なんてことまで――。 「そういえば凌、帰ってくるんですよ。知ってました?」 知ってる。誰よりもその日を待っているのだから。 だけど驚きに声が出なくて……。 「迎えに行こうかなぁ。そしたら『ただいま』ってまたキスしてくれるかも」 「――っ!?」 「そのときは邪魔しないでくださいね」 ただ、彼女がコートに向かう背中を見つめることしか出来なかった。 ずっと泉の言葉が頭の中を駆け巡る。 先輩、彼女とキス したんですか――?
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