序章

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おれの友人、相田 光太郎(あいだ こうたろう)は物静かで落ち着きのある文系・草食系に属する男だ。 人付き合いが苦手、騒がしいのも苦手なため出来るだけ外出をしない男である。 そんな男は渋い名前に反して、容姿はまるで女と見間違われても遜色ないものだった。 その結果、名前と容姿のギャップが激しいことで小さな頃から苦労をしてきたのを見てきたおれとしては顔が整ってるのも考えものだな、と思った。 そんな光太郎の趣味は細やかながら創作小説を書くことだ。 その自作した小説の数々をおれだけに見せて、感想や反応を見た後は満足してお蔵入りするという意味不明な行動をする。 それにおれは勿体ないから出版社に送ったりしたりしないのか?と聞く度に友人はただ黙って首を横に振るだけだった。 「これ、この前見せて貰った小説か……また、お蔵入りにするのか?」 「あぁ、もう満足したから保存して置いておく」 「またか…勿体ない奴だな」 「俺が満足したから良いんだ」 「お前ならその趣味で食っていけそうなんだがな」 「趣味で食っていけるなんて、そんなの一握りの人間だけだよ」 「それでも何もしないのは勿体ないと思うんだが」 現在、おれは光太郎の自宅で奴の自室にいた。 先程の会話で意思を曲げない光太郎の頑固さにおれはため息を吐き出しては椅子に座った。 ホント、頑固だよな……。 内心で呆れてるおれの事に目もくれず、光太郎はまた新しい創作小説が浮かんだようで机に向かって書き続けるその姿にまたため息を吐き出した。 ホントに……勿体ない奴だなぁ… .
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