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あれから
夏休みも終わり相変わらずの日々を過ごす僕。
あの夏祭りの後といえば、夏休みの最後の日に拓哉の宿題を手伝ったくらいだろう。
学校が始まっても彼女に話しかける事もないし、話しかけられる事もない。
これでいいんだ。
僕はそう思っている。
これが僕にふさわしいのだ、と。
月日は流れ、高校3年生の夏。
受験シーズン。
勉強の事だけを考えていればよいので、なんだか気が楽だった。
勉強も人よりも少し出来る方だから志望校に合格するのはほぼ間違いないだろう。
彼女はどこの大学に進学するのか知らない。
彼女と同じ学校なのもこれが最後だろう。
なんだか勉強する気がなくなってしまった。
気分転換に出かける事にした。
家の周りを歩いていると、祭り囃子が聞こえてきた。
そうか、今日は夏祭りなのか。
2年前のあの事を思い出すな…。
そう思いながら歩いていると、いつの間にか夏祭りのすぐ近くまでやってきてしまった。
久々だし、少しだけ見ていこう。
僕は中に入った。
相変わらず人が多いな、この祭りは…。
「…みー君。」
誰かに呼ばれた気がした。
しかし、周りに知り合いは見当たらなかった。
「空耳か?」
そう思いまた歩き出すと
「みー君。」
また呼ばれた。
今度はさっきよりもはっきり聞こえた。
辺りを見回してみる。
「……あっ。」
思わず声が出てしまった。
彼女が居た。
駆け寄ろうかと思ったが、僕はその場に立ち尽くしていた。
「またあの先輩と来ているのだろうか…。」
僕は後ろず去りした。
すると彼女はこちらに駆け寄って来たのだ。
「みー君も夏祭りに来てたんだー。」
彼女はそう言って微笑んだ。
「あ、うん。勉強する気が起きなくてね。」
「え、そうなの?私も一緒なんだー。」
「突然だったからさ、友達も来れなくて…1人なんだっ。」
彼女は1人で来ていたらしい。
浴衣姿をこんなに近くで見れるとは…。
そんな事を考えつつ僕は、
「そ、そんなんだ。ちーが1人で居るなんて珍しいな。」
!?思わず幼い頃呼んでいたあだ名で彼女の事を言ってしまった。
「あはは、懐かしいなー。みー君最近名字で呼ぶからさー。」
彼女は少しはにかんでいた。
「そうだなー。最近話す機会もなかったし。」
僕も少し照れていた。
「歩き疲れちゃったからさ、あっちでちょっと休憩しようよ。」
「あ、そうだね。そうしようか。」
彼女の提案に僕は乗った。
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