第3章

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「ちょっと田島せんぱーい。ヒロにだけ優しくないっすかぁー。」 わざとらしく低い声でミーが言った。 「ん?そんなこたぁないよ。俺は女子には分け隔てなく接するタイプなんだ。このあと瞳ちゃんにももちろん先輩として気遣いの声をかけるつもりでいたさ!」 両手を腰にあてて、にかっと笑顔を見せる。 「別にいいんですけどね」 ふふっ。 ほらね、ミーの返事はそっけない。 「冷たいなぁ、瞳ちゃん。 あ。でも瞳ちゃん剣道まじセンスあるよ!この一ヶ月ですげー吸収してる!」 「ほんとですかぁ?田島せんぱいに言われてもよく分かんないかも。」 そう言いながらも、さっきとは違ってミーは少し嬉しそうな顔をしている。 「いや、ほんとだって!動きに無駄がないっつーか。あとは体力とスピードと技術をしっかり身につければ。」 「…なんかそれまだまだじゃないですかあ」 気だるい声で答えながらきつく締まった胴を外すと、立ち上がって一度大きく伸びをした。 そんなミーを下から見つめた。 ミーはたしかに初心者だけど基本の飲み込みが早い。 色が白くて体だって細いのに、竹刀を持つ手はぶれることなく相手の面へと吸い寄せられる。 …このままちゃんと続ければすごく強くなりそうな気がする。
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