∽1∽ 医師と意思の会話

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「特別、というのは……?」 ――然して意味があるワケでもないのだガ。単なる気まぐれのようなモノだからナ。 「話が見えないんだが……」 それはそうだ。 この元殺し屋の医者は、当然今までに死んだ事がない。 無論死んだ事のある人間などいないし、もしくはそれを覚えている人間も……これは置いておこう。 ともかくとして、そう易々と理解されるとは思っていない。 ――難しく考えるナ。理解しなくて良い。 ――――今から、君は、生まれ変わる。 素直に単語を並べれば、至極単純極まりない。 もちろんマチューにもすんなりと理解できたはずだ。 しかし理解と許容とは違うものだったらしい。 どちらも成そうが成すまいが意味はない事なのだが。 ――生まれ変わりというモノ自体は、知らなくはないだロ? 「確かにそうだが……」 『生まれ変わり』と一口に言っても、その意味もまた特別である。 恐らくマチューが思い浮かべているのはマチュー・ロンシャンでもグレゴワール・ブノワでもない、真新しい別人として生まれ変わる事。 そうして誰かの元に生まれ、赤ん坊から人生をやり直す――――無論違う訳だが。 .
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