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マチューは至極もっともな疑問を投げかけてきた。
「待ってくれ。――トラックにはねられたという事は、私の身体は今どうなっている……?」
――あまり気にするナ。どうとでも片付けられる問題ダ。
「そんな適当な答えで納得すると思うのかい……」
――気にするナと言っている。ただ生まれ変わるといっても、ある程度の条件があるんダ。
それはまさしく、生への執着。
魂だけになってもなお、思いは誰にも存在する。
私の目から見て、マチューのそれは思ったよりずっと薄かった。
味わった運命は思いがけないものだったろうにと、不思議に思わなくもなかった。
無論それにも彼なりの理由があった。
「……私にそんな資格はない。もう言ったが」
――ああ、もう聞いた。
輝かしい功績。
彼は多くの命を奪った殺し屋かも知れないが、同時に多くの命を救った医者でもある。
そのどちらも同じ彼である、という事が彼にとって重大な問題なのだろうが。
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