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「……生きている間に善行を積めば天国に行けると聞いた。逆に悪行を積めば……」
――別にキミがどちらにも受け入れられないとは言っていない。
「そうかい。では、どういう事なんだ……?」
――答えるならばこうダ。キミは必要とされている。
「………………」
私の知る限り、あまねく命がそうだ――――形や性質は関係なく、誰もが宝石のように輝いている。
彼を畳みかけるべく、更に説教を開始した。
先手必勝だ。
――キミは何人の患者を抱えている?彼らを放って逝くのか?
いや、これはいささか卑怯だったか。
自らの人生にまつわる決断に、他人の人生の問題を組み込むべきではない。
しかし結果的にマチューは大いに揺らいでくれた。
やはり彼はその医師という職に相応しい優しい人間なのだ。
そして『ふ』と決定打となる疑問を私に投げかけてきた時、全てが決まった。
「……あの親子はどうなった?」
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