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マチューはもう1度逡巡した後、意を決して私を真っ直ぐに見据えた。
腹を決めたという表情だ。
それは彼の半生の先々であった、重要な場面で見せてきたものだろう。
自ら、または友人や患者、その家族、その他の誰かしらの人生を大きく左右する時、その責任を全うしてきた眼。
彼の眼光はまさしく生きるに相応しい、情熱に満ち満ちていた。
――シニガミのセリフとは思えないダロウが、マチュー。
――キミに【神】のご加護のある事を祈るヨ。
マチューは表情を崩した。
笑うようにも見え、泣いているようにも見えた。
事故からどのくらい時間が経ったのか、マチューは目覚めてすぐ頭の隅で考えた。
もちろん脳は充分に考え事を出来る程には覚醒しておらず、すぐにやめた。
視線だけを泳がせ、そこが何処なのか確かめる。
白を基調とした部屋に、独特の消毒薬の匂いに、丁寧に洗濯されたシーツに簡易的な造りのベッド。
そこはどこかの病院に設置された病室だった。
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