∽1∽ 医師と意思の会話

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夢であれ何であれシニガミ、と言うか死神が自分の元に現れた。 つまりはマチュー・ロンシャンという自分に終わりが近付いている――――そういう暗示だったのではないか? それならそれで仕方無い。 悪行を積めば地獄に堕ちる――それは死んだ後の話で、生きている間だってそれ相応の報いを受ける事になるのだ。 今更逃げるつもりは無い。 『何もそうとは言わなかっただロウ?』 聞いた事のある声が聞こえた。 自分がまだ眠り続けていて夢を見ているのでなければ、これは現実のものなのだろう。 『マチュー、いや、グレゴワールと呼んだ方が良いカ?どちらにせよキミの名だが』 「……これは現実かい」 『正真正銘、ゲンジツだとも。まだ信じていなかったトハ驚いた』 「すんなり信じる方がおかしいと思うが」 『だが現実ダ』 「…………死に損ねたという訳だな」 『損ねてはいナイ。どのみちキミは生き延びるハズだったんだゾ』 マチューは私を睨んだ。 殺し屋のそれに見えなくもない目つきは、変わりようのない過去を思い出させる。 それでも多くの人間は生きようとするものだ。 得体の知れない未来など、誰も手にしたくはないだろう。 仕事柄たまに手にしたがる連中もよく見かけるのだが、マチューの目はそういう連中とは違う。 即ち、目の前の男は生きようとしている。 それで充分じゃないか、と言ってやりたい。 .
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