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時間が有限でない事について、時には羨ましがられる事もある。
しかし当事者にとっては堪らない事実である場合もある。
ことに終わる事のない仕事を課せられた我々シニガミのような存在には。
これ以上長々と語る事はしないでおくが、だからあれこれと聞いてこないマチューには大いに助かった。
相も変わらず何かを考え、それをやがて口にするかも知れない。
だがそれまでに事を済ませれば良いだけの話で、私は何も気にせずにいた。
そのまま事を済ませられれば良かった。
マチューが単なる人類70億人の内の1人に過ぎず、自分が死んだ事をあっさりと受け入れていたならば。
別にこの後に起こった事を悔いている訳ではない。
結果的に私もそれ相応の報いを受ける事となったし、それについても悔いてはいない。
要するに受け入れる事が出来るかどうか、受け入れられないとしてそれ以外の道を自力で切り開けるかだ。
マチューは自力で切り開けるタイプだった。
彼はまさしくそうやって生きてきた。
聞いてもいないのに彼は語り出した。
理由は話さずにおくが、実を言うと聞かずともいくらかは知っていた話だが。
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