∽1∽ 医師と意思の会話

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それは大人になるための通過儀礼のようなものだった。 命のやり取りが常となった場所では珍しくない話だ。 男は兵士となり、武器を握り、他の命を奪う事を矜持とする。 そのうちに逆に命を奪われてしまう者が多いが、運良く生き延びて大人になった者は、そのまま殺し屋や兵士となり、人生を全うする。 マチューもその1人だった。 彼は精鋭の殺し屋として育てられ、誰からも一目置かれる存在になった。 それも20歳の誕生日を迎えるまでの事だったが。 「ある時、とある人物の暗殺を命じられたんだ。深夜のモーテルに忍び込むものだった」 これも彼が教えてくれたから語るが、今の彼の自称である『マチュー・ロンシャン』は偽名だ。 彼は本名(かどうかも定かでないが)を『グレゴワール・ブノワ』と言い、当然この時までそう名乗っていた。 ――ではグレゴワール、何故キミは医者となった?
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